「山鹿」を仕掛ける人「ローカルジーンズ」という新たな町おこしコンテンツ
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- 更新日:2021.10.1
GAFAS NEGRAS
関口 和良さん
群馬県出身。およそ10年前、母の実家である山鹿市に移住。2018年、地元の旅館や商店主とともに『グラファス ネグラス協会』を旗揚げ。地域の町おこしを目的に開発した山鹿ローカルジーンズ『GRAFAS NEGRAS』のデニムを軸に、観光客はもとより、山鹿で暮らす人たちに向けた市内の魅力を再発見してもらう取り組みを行う。
山鹿でジーンズ。その意図
深みのある美しい藍の表情。その手触りは想像以上に柔かく、いわゆる生デニムとも異なる生地の質感に個性が光ります。“山鹿ローカルジーンズ”と銘打たれたデニムは、2018年、関口和良さんら3名の地元有志のアイデアによって誕生しました。驚くべきことに、リリースからわずか一年で注文数は300本にせまり、関口さんたちの“山鹿ジーンズ”は、市の新たなコンテンツとしてこのうえないスタートを切りました。
関口さんを窓口とする『グラファス ネグラス協会』は、山鹿ローカルジーンズの始動にともない立ち上がった町おこし団体。メンバーは温泉旅館『清流荘』の平井秀智社長、畳店経営者の前田昌宏さんを合わせた3名で構成。団体名でありブランド名にもなる『GAFAS NEGRAS(グラファス ネグラス)』は、スペイン語で「黒縁めがね」を意味します。メンバー3人がそろってめがねをかけていることも命名の決め手!? だとか。
ところでなぜ「山鹿でジーンズ」という発想がそもそも生まれたのか。「メンバーの一人が友人から県内の縫製工場を紹介されたんです」と関口さん。偶然にもそこで作られていたのは美しいジーンズだったといいます。「生産体制が確保できることを知って以来、国産ジーンズの最高峰の倉敷(岡山)の素材を使い企画してみようとなったんです」。とはいえ、アパレル未経験に加え、普段からデニムを穿かない”おじさん3人組“がどのようにジーンズを企画をしたのでしょうか。「3人がもつジーンズへのイメージを具現化したとしか言えませんが、質の高い生地を生かすこと、または独自性を加える検討は重ねましたね」。そこで着目したのが、山鹿の温泉でした。「糊に被われパリパリに仕上がったデニム生地を、弱アルカリ性の山鹿の温泉で“ウォッシュ”するという発想です。一般的なウォッシュに使われる水質や温度が山鹿温泉の泉質に見事にハマりました」。こうして、柔らかな肌触りと適度に色味が抑えられたオリジナルデニムは、ついに形となりました。
町の魅力は黙っていては伝わらない
『GAFAS NEGRAS(グラファス ネグラス)』のジーンズに縫い付けられた、インパクトを放つパッチ。表面には山鹿温泉を愛した肥後細川家の「九曜紋」が描かれています。実はそれこそが「ローカルジーンズとしての証」と関口さんは言います。「このパッチは、山鹿発のプロダクトであることを全面に訴求するものではないんです。むしろ、このジーンズを穿いて山鹿の町を回遊してもらうことに意味がある。いわば“着るクーポン”ですね」。山鹿ジーンズの製造販売によるブランドを活用した地域おこしプロジェクト。ジーンズを穿いて訪問すると店ごとのサービスや特典を受けられる仕組みをつくったのも、観光客の回遊性や購買の可能性を高めたい狙いです。「すでに26店舗の加盟・協力をいただき、町歩きの新たな動線が生まれています。いずれは山鹿ローカルジーンズ全体の活動を通して雇用や活力を山鹿にもっと生み出していきたいですね」。
新型コロナウイルスの影響で人流が制限される昨今。関口さんの町おこし活動もまた、一つの大きな過渡期にあるといいます。「積極的に人を呼び込めない今は、オンライン上での情報発信が肝になると思っていて、そのためのフレームづくりに奔走しているところです」。一方で山鹿に住む人にも、日ごろあまりに馴染みすぎて気づかない市の魅力に気づいてもらうことも重要だと関口さんは付け加えます。「温泉しかり伝統工芸しかり、町並みしかり。山鹿って他所にはない武器(魅力)が多いんですよ」。かつて“県外者”として山鹿を訪れていた頃の自分を重ねながら、今の町の魅力を語る関口さんの目には、山鹿ローカルジーンズ『GAFAS NEGRAS』の次なるステージが映っています。